晩秋、道に迷う。
東京に行くと、必ず足を運ぶ場所がある。
心がほっと休まるような、それでいてこの世のどこでもないような、神聖な空気をもった場所。
高専に入ったころに初めて訪れて以来、上京のたびに行っては気持ちの整理をつけたり、なんともいえないエネルギーをもらったりしていた。
今回、東京で仕事につくために、都内の彼の家に少し長くお邪魔している。
企業にエントリして、面接を受けたりなんだり。
数週間滞在するつもりでいるけど、当然今の自分に収入があるわけではなく、彼に食事や日用品の面倒をみてもらっている。
それが大変にありがたい。
大変にありがたくて、心からの感謝をしたいんだけど、なんだかとてもモヤモヤうじうじしていた。
ありがたい以上に、こんなに良くしてもらわなきゃならない自分が許せない気持ちがあって。
一方、仕事についても、とにかくスッキリしない気持ちが消えなかった。
今はデザイン会社に照準を合わせて、一丁前に面接とか受けているけど、実際自分はデザイナーとしてやっていけるのか?という不安がある。
仕事についたら都内で一人暮らしをしたいので、もし例えば踏ん張りがきかなかったり、体力がもたなかったりして数ヶ月で辞めるようなことがあれば、それは死活問題なわけで。
一流のデザイナーのそばで技術を学びたいって威勢の良い気持ちでの今の行動だけど、本当はこれまでみたいに、別業種のデザインもやれます的ポジションに収まった方が、それが志低いって事ではなく、自分に合ってるという可能性は?。。
なんてことも思う。
今日、面接の帰りにいつもの場所に訪れて、清浄な空気に深呼吸しながらそんなことを思い巡らせていたら、フッと、「あぁ、今自分は道に迷っているんだなぁ」と自覚した。
何だかバカみたいに見えるけど、これがなかなか、深く腑に落ちて。
そうなんだ。
変に大人ぶって確信めいたフリをしていたけど、今自分は道に迷ってるんだ。
だから、今は助けが必要なんだ。
それを自分で納得できてない限り、感謝なんてできないよね。
そう思ったら、自然に、じわじわとありがたい気持ちが沸いてきた。
今の自分はダメダメで、何の力もないけど、幸せを望む気持ちがある。
それに辿りつく道がまだ見えないけど、迷うときはしっかり迷おうと思った。
バタついてみようと思った。
そんな得心をくれた「聖地」にもありがとうを言って、また来ることを約束し、その場所を後にした。
今日は、たぶんよく眠れそう。